4年にわたる裁判の判決が出ました。正式には「違法公金支出金返還請求事件」です。
経過が長かったものですから、福山市において「ヤミ専従」に関する裁判が行われていたと言ってもピンと来ない方が多いかもしれません。 http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200907290034.html 判決文には裁判長の「市民の疑念が生じることは否定できない」とのコメントもありましたが、原告全面敗訴でした。 公務員には公務に対する「職務専念義務」があります。それを免除するという事は一般的には、労働組合の「専従」になることを意味します。以後は給与は組合から支払われることになります。 しかし、組合事務所(!)で「自治体改革推進委員会」等の3委員会を組織して仕事をしていた組合幹部に福山市は給与(8人に年間5400万円)を払っていた事実に対して、オンブズマンが「ヤミ専従」ではないかと4年前に訴えたのです。 対して福山市も組合も、8人は「自治体改革推進委員会」という組織は「公務をしていた」と主張し、それを裁判所が認めてしまったのです。 判決文によると下記のような内容も「公務」となります。 ①市立動物園のペンギン舎建設の図面検討等について、同園職員の意見を聴取し、政策提言した。(判決文P30) ②道三川周辺住民から依頼のあった樹木剪定をどうするか、協議した。(同) ③市職員の福利厚生の一環として行われるハイキングバスツアーの参加者募集の機関紙を作成し、全職場に配布する準備をした。(同P32) 担当弁護士は次のように述べておられます。 ではなぜ職務専念義務を免除していたのでしょうか? 職専を免除して公務を行う公務員というのはあり得ないはずです。 また、8人は組合側と行政側のどちらを向いて仕事をしていたのでしょうか? 裁判を通じて福山市の労働組合の実態および、民意の届かない(選挙で選ばれた議員ではなく)組合幹部と行政トップにより意思決定がなされている事が理解できた。それが福山市の実態である。 また、この事実が明るみになって以来、福山市は3委員会を「自治体改革推進会議」と改め、職務専念義務の免除を「取り消し」、専用の部屋も整備するなどして取り繕って来ました。この事も判決と極めて矛盾するのではないでしょうか。 引き続き高裁で頑張っていただきたいものです。 下記は私がこの問題を追及した4年前の議事録ですが、この時もヤジが相当飛び交いました。 ----------------------------------------------- 平成17年6月定例会 ◆3番(大田祐介)自治体改革推進会議の設置についてお尋ねします。 本年3月定例会で,やみ専従問題に対する質問と答弁などをもとに,このたび自治体改革推進会議の設置に関する要綱を発表されました。3月定例会では,組合の専従職員以外の職員は,適法な組合活動のほか,それぞれ自治体改革推進委員,厚生事業委員,安全衛生委員として,職員の福利厚生,給与制度,労働安全衛生等の課題の改善に向けた業務に日々従事しているもので,本市が目指す労使協働という労使関係の 中で,それぞれの委員として業務に取り組んでいるものでありますと答弁され,そしてこのたびの総務委員会の資料のこれまでの経緯の中では,低年齢児保育,延長保育などの保育サービスの充実,また職員定数の削減,特殊勤務手当見直し,調整手当廃止などなど,行財政改革の推進が行われたのも委員会活動の成果の一つであり,本市が健全な財政状況を維持し続けてきた要因の一つでもあると,これまでの委員会の成 果を明らかにされています。 しかし,議会には,このような委員会があることも,また市費で活動する職務専念義務免除職員が8名在職していることも知らされていませんでした。当然のことながら,議会からの行革の指摘などに対して,理事者と組合との協議で先ほどの成果が上がったものと理解しておりました。それだけに,その存在の正当性を説明されても,即座には理解できない隔靴掻痒の思い,水虫を靴の上からかくような思いがしております。専従職員の存在を隠していたとは思いませんが,これからの市業務に対する説明責任の重大性を認識していただきたいのですが,お考えをお聞かせください。 ◎市長(羽田皓)次に,自治体改革推進会議についであります。 自治体改革推進委員会を初めとする3つの委員会は内部の協議機関として設置していましたが,今回これまでの委員会活動をより明確にし,市民にわかりやすいものとするため,要綱を制定することといたしました。 要綱制定に当たり,組合役員を委員会の業務に従事させるため,条例の規定により行っていた職務専念義務免除の手続は行わないこととしてまいりたいと考えております。具体的な運用として,組合役員である委員の所属につきましては,当面,現在所属している職場と自治体改革推進会議の業務を所管する部署との兼務を考えておりますが,業務実態を踏まえる中で,より実効が上がる方法も検討してまいりたいと考えております。 ◆3番(大田祐介)続いて,自治体改革推進会議について再度お尋ねいたします。 市民や議会に対する説明責任についてでございます。6月6日に総務委員会がありまして,6月7日の新聞等に報道がありましたけども,随分おとなしい印象を受けました。これは,市民に説明責任という観点からも,もっともっとマスメディア等に働きかけて,この推進会議の今までの経緯であるとか,実績であるとか,設置理由について,市民に広報する必要があるのではないかと考えます。 この推進会議の要綱については,三重県の労使協働委員会,これを参考にされたと伺っておりますが,三重県では労使の協働アピールというのを発表されて,市民に対する,県民に対する広報をされております。そういった考えは本市にはございませんか。 それから,先日総務省がやみ専従について全自治体を対象とした実態調査を行うという発表がございました。本市は,今後はこの推進会議によってこの問題をクリアするのだろうとは思いますけども,過去については恐らくこの実態調査の対象にもなると思いますので,過去について実態調査があった場合の対応についてはいかに考えられておるか,お示しください。 それと,この推進会議の設置要綱についてですが,いわゆる,ながら条例というのがございますが,職員団体のための職員の行為の制限の特例に関する条例,非常にわかりにくいんですけども,これどういうものかといいますと,このながら条例というのは旧自治省が1966年に国家公務員と同様に公務時間内の労使交渉を認めるために作成した条例案がひな形。しかし,一部の自治体がこれを拡大解釈して,交渉の準備行為も有給扱いとする条例を制定していると,これがこのたびの総務省の実態調査のベースにもなっているようでございます。そういったそのながら条例とは,今回の自治体改革推進会議の設置要綱については一線を画するものであるのかどうなのか,お示しください。 それから,私も職員さんにこういった改革推進委員さんの活動について伺ったことがあります。確かにそういった委員さんがおられて,職場でいろんな要望を聞いてくれると。例えば,退職者が出るので補充してほしいとか,業務を効率化するのでパソコンを導入してほしいとか,そういった要望をして,実際それをかなえてもらって,委員さんの活動は評価しておると。私そのように伺ったわけでございますが,ちょっと考えてみますと,そういった活動は上司の業務ではないかと,職場職場の上司の仕事ではないかと私は思うわけでございます。仮にそういった上司の仕事を補完するような意味で改革推進委員さん等がおられるのであれば,これ逆に適正な人材登用がなされていなかったのではないかという懸念が新たに生じるわけでございます。そう いったことがなかったのかあったのか,お示しください。 それから,8人の委員さんがおられるということでございますが,その8人の給与総額についてはお幾らなのか,お示しください。 ◎総務部長(近藤洋児) 自治体改革推進会議につきましてのお尋ねであります。 最初に,実績等の説明やアピール,こういったところでの御質問だったと思います。これにつきましては,この自治体改革推進会議の取り組みの要綱制定前の委員会自体が法律,条例の定めでなく,内部協議機関として位置づけたものでありますので,そういった取り組みはありませんでしたが,今回この自治体改革推進会議の位置づけに当たりまして,より市民の方に理解していただけるように情報公開をしてまいりたいと,そういうふうに考えているものであります。 それから,国のいわゆるやみ専従ということでの過去についての対応という御質問でありますが,これまで総務委員会等で御説明してまいりましたように,この会議の前段としてこれまで委員会でずっと活動してまいっております。これはあくまでも市長,それから議会等へ提案させていただくための協議をさせていただいておりました。これにつきましては,市の業務としてやっているということで,給料を支払って組合の活動をしているというふうなやみ専従の中身ではないということで,常に御説明をさせていただいておりますし,そういった会議の成果も御説明をさせていただいた中身であります。 それから,ながら条例についての御質問でありますが,このながら条例というのは,いわゆる職務専念義務の免除についての規定であります。本市につきましては,職務専念義務の免除というのは,本来配属されている職場の業務を一たん免除して,この委員会の業務につくということのためにその職務専念義務の免除を行っていたものであります。したがいまして,このながら条例の適用という部分につきましては,あくまでも市の条例の規定に基づいて行っておりましたが,今回この会議を設置することにより,より市の業務としての位置づけが明確になりますので,今回職務専念義務の免除については,要綱を7月1日から施行するに当たりまして,取り消していこうと,こういうふうに考えているところであります。 それから,職務の中で上司の業務ではないかというふうに御指摘があったところでありますが,この委員会,さらには会議の業務というのは,やはりこれまでの縦割りごとの行政,行政と言うとおかしいですが,業務ではなくて,これまで取り組んできていた中身は横断的な業務の検討をしていこうということで,そういう取り組みをしてきております。したがって,ただ上司が判断をして,上司が決定すればいいんじゃないかというふうな判断にはならないというふうに考えておりますし,そういう業務を行ってきているということで御理解をいただきたいというふうに思っております。 それから,8人の給与総額につきましては,2004年度平成16年度の年間の給与総額が約5400万円余というふうに計算をいたしております。 ◆3番(大田祐介) それでは最後に,自治体改革推進会議について,1点だけお尋ねいたします。 私,三重県に電話をしまして,労使協働委員会の担当の方に設立の経緯であるとか,成果についてお尋ねしてみました。いろいろ成果は上げられとるようでございます。ただ,その中で担当の方がおっしゃるに,福山市さんと三重県では設立の経緯が多少違うんではないでしょうかというようなお言葉をいただきました。三重県では,北川前知事,これは改革派の知事として全国的に有名な知事でございます。従来の労使交渉,これはアンダー・ザ・テーブルであったと,それではいけないと,机の上の交渉にしようと,そういうことで内発的に出てきた労使協働の委員会であると,そのような説明を受けました。それに対して,その担当者の方がおっしゃるに,福山市さんの場合は,それはもう市民とか議会から指摘があって出てきた問題であって,スタートが違うんじゃないでしょうかと,皮肉とも何とも言えないような御見解を伺いました。 いずれにしても,三重県の労使協働委員会と同じ成果を目指すのであれば,この三重県の北川前知事が大阪市の職員厚遇問題についてインタビューを受けておられまして,こういったコメントを出されております。ちょっと御紹介いたします。 大阪市は,このピンチを最大のチャンスだととらえるべきだ。三重県でも平成8年空出張の問題が出て,全部うみを出そうよと3カ月間庁内で大激論があった。公務員は本来まじめだからその中から改革します,自主変換します,処分を受けますという動きが自発的に出てきた。大阪市も内発的に変わるチャンスだと僕は期待している。 それにはトップがしっかりしていなければいけない。トップと職員の違いは,非日常の決断をせざるを得ないという点,しがらみを断ち切る勇気がなければだめだ。中央集権はさまざまななれ合いを生んできた。行政当局と労働組合,議会,さらには市民,経済界もみんなその体制を守ろうとした。労使のなれ合いは全国に幾らでもあった。それを解消することが行政改革。組合も自身が徹底的に問題を出す努力をやればいいと,このように述べておられます。 市長もこの北川前知事の目標とされた労使協働委員会の指針をぜひ取り入れて,この推進会議の成果を出していただきたい,そのように要望するものでございますが,市長の御所見をお示しください。 ◎市長(羽田皓) 福山市の今回自治体推進会議ということで要綱を制定したわけでございますけれども,総務委員会でも明らかにいたしておりますとおり,福山市,中核市,また三位一体改革と,いろいろ財政状況が厳しい中で,この福山市の持続的な発展,これをどう図っていくかと,そこらの議論の中には,当然今までその委員会の中で解決いたしておりますけれども,特殊勤務手当でありますとか調整手当でありますとか,いろいろ労働条件にかかわる課題もある。と同時に,横の連携といいますか,福山市,今後定員管理計画等も今進めておりますけれども,いかに効率的な業務をやっていくか。そのためには業務の一つ一つをきちっと洗い直した上で,効率的な人数でやっていく体制づくり,職員の意識改革と,こういうようなものも必要なわけ でございます。そういうようなものが一つのテーマとしてお互いに議論してきた,そういう経過がありますよと。 三重県ですか,北川知事のことをおっしゃいましたけれども,我々も,そりゃ今回要綱を出したというのは,いろんな御指摘があって,職務専念義務の免除をするべき内容だったかどうかということも含めて,いろいろ議論して,それは福山市の仕事ではないかというようなことの中で整理をしたわけでございまして,内実的には北川知事のおっしゃっているそういう内容というのは,我々も97年以降そういう取り組みをしてきた。そのことが今回要綱として明らかにさせていただいたと,こういうことでございますし,今後ともこの福山市の発展のために,労使協働制といいますか,そういう一体となった取り組みをしていく必要があると,このように考えております。
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| 2009-07-29 18:38
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